十一面観音って?顔が11?(◎_◎;)!

十一面観音(じゅういちめんかんのん)

梵字:キャ

真言:おん ろけいじんばら きりく そわか

11の顔を持ち、全方向を見渡すことで、苦しむ人を即座に見つけ、あらゆる人びとを見守り続ける観音さまです

正面に化仏(けぶつ)(阿弥陀如来)

頭頂に仏面(ぶつめん)

前に菩提面(ぼさつめん)(慈悲の表情)が三面

向かって右に忿怒(ふんぬ)面(怒りの表情)が三面

向かって左に狗牙上出面(くがじょうしゅつめん)(白い歯を見せて微笑む)が三面

後頭部に大笑面(だいしょうめん)(悪行を笑いとばす)が一面

暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)

菩薩には性別はないが、十一面観音の場合は女性をイメージさせる美しい像が多い

腕は2本か4本、左手は蓮華(ハスの花)をさした水瓶(すいびょう)を持ち、右手はたらし数珠(じゅず)をもつが、数珠が失われた像は多い

早くから日本に伝わり、唐の僧・玄奘(げんじょう)が漢訳した『十一面神呪心経(じゅういちめんしんじゅしんぎょう)』に説かれている

現世利益(げんぜりやく)(この世で受ける仏の恵み)と、来世利益(らいせりやく)(亡くなった後で受ける恵み)両方のご利益が受けられる

インドでの名前は「エーカダシャムカ」

密教では、観音菩薩の変化した六観音の一つとされ、修羅道(あしゅらどう)に転生した人々を救う

十一面(じゅういちめん)
頭頂に仏面(ぶつめん)
前に菩提面(ぼさつめん)(慈悲の表情)が三面
向かって右に忿怒(ふんぬ)面(怒りの表情)が三面
向かって左に狗牙上出面(くがじょうしゅつめん)(白い歯を見せて微笑む)が三面
後頭部に大笑面(悪行を笑いとばす)を備える

蓮華(れんげ)
泥の中から生じて美しい花を咲かせることから、悟りを象徴する

三道(さんどう)
喉元にある三本のしわ

白毫(びゃくもう)
額の中央にある右まわりに丸まった白い毛

瓔珞(ようらく)
金・銀・真珠などをつないだネックレス

臂釧(ひせん)
上腕につける飾り

条帛(じょうはく)
左肩から右脇の
下にまとうショール

水瓶(すいびょう)
人びとの願いを叶える「功徳水(くどくすい)」が入っている
この水を注がれた人びとは煩悩(ぼんのう)が消え去る

碗釧(わんせん)
手首につけるブレスレット

(くん)
スカートのように腰に巻きつける布
裳(も)ともいう

蓮華座(れんげざ)
蓮華をかたどった台座

立っている十一面観音の多くは慈悲の表情を浮かべ、女性的で端正な立ち姿で造形されている

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

聖林寺(しょうりんじ)(奈良)

国宝
木心乾漆造(もくしんかんしつづくり)
奈良時代 8世紀
像高209.0㎝

十一面観音像は、量感あふれる堂々とした大きな像であり、あふれる包容力がある

完成度の高さから、官営工房で造られたものと考えられている

この十一面観音像は、三輪山を御神体とする大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市)の境内に安置されていた

慶応4年(明治元年/1868)3月の、いわゆる「神仏分離令」によって、仏と神を一緒に祀ることはできなくなり、近くの聖林寺に移りました

明治19年(1886)、明治政府の宝物調査団の、アメリカ人のフェノロサは、この十一面観音像と初めて出会った
2年後にも聖林寺を訪れ、十一面観音像の厨子(ずし)が腐朽しているのをみて金50円を寄進した
完成した厨子は、火災の時には、十一面観音像を安全な背後へ容易に引き出せる、特殊な造りになっていた

十一面観音菩薩立像(じゅういちめんかんぜおんぼさつりゅうぞう)

安祥寺(あんしょうじ)(京都)

重要文化財
像高252.5㎝

カヤ材を用いた一木造
表面は漆箔仕上げ

半丈六(釈迦の身長である一丈六尺=約480㎝の半分の大きさ)の奈良時代末に造像された巨像です

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

羽賀寺(はがじ)(福井県)
重要文化財
木造
像高145.4㎝
平安時代 9-10世紀

一木造(いちぼくづくり)で内刳(うちぐ)りはない

秘仏であったため、制作当初の色がよく残っている

美しい若狭の、数多くの仏像の中で、とても印象深い十一面観音像です

異国風の顔立ち
不思議な眼差(まなざ)し
切れ長の眉
動きのある衣をまとう、なまめかしい肉体、元正(げんしょう)女帝(聖武天皇の叔母)の姿を写したとされている

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

向源寺(こうげんじ)(渡岸寺(どうがんじ)観音堂)

国宝
木造
平安時代
像高 194㎝

戦国時代の浅井・織田の戦いでは、地域の人がこの十一面観音を土中に埋め、守られてきた観音さまです

この十一面観音は予約なしで、360度拝観できます

十面のうちの二面が、正面の顔の左右にまるでヘッドフォンのように配置されているのも面白い
くびれた腰を左にひねった姿といい、十字のおヘソといい、とても魅力的です

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

海住山寺(かいじゅうせんじ)(京都)

重要文化財
木造
45.5㎝
平安時代 9世紀

鎌倉時代の前期、奈良を中心に、各地で仏教の復興に力を尽くした貞慶(じょうけい)という高僧の念持仏(ねんじぶつ)であったという

貞慶は、東大寺を復興した重源(ちょうげん)と親しく、仏師快慶とも親しかった

カヤ一材から彫り出され、仏師の刀(とう)が鋭く冴え、とても優れた造仏です

本尊 海住山寺

本尊の十一面観音立像は、目の前にすると、とても慈悲深いあたたかさを感じます

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

法華寺(ほっけじ)(奈良)

国宝
木造
100.0㎝
平安時代 9世紀

法華寺は奈良時代、光明皇后が亡き父の邸宅を造り変えて尼寺にしたものです

カヤ一材で彫り、内刳(うちぐ)りはない

風になびく髪や天衣(てんね)
うねるような裳裾(もすそ)
天衣をつまむ長い右腕の指先が反(そ)り返る
動きのある生き生きとした表現は、光明皇后の姿を重ねたと言われている

十一面観音菩薩立像(じゅういちめん かんのん ぼさつ りゅうぞう)

室生寺(むろうじ)(奈良県)

国宝
木造
彩色
彫眼
196.2㎝
平安時代

小ぶりな目鼻立ち、ふっくらとした頬はかわいい

手に取る水瓶に、注口のあるのは珍しい

室生寺の本尊の脇侍としてつくられ
現在は、室生寺の寶物殿(ほうもつでん)に安置されている

十一面観音立像(じゅういちめんかんのん りゅぞう)

唐招提寺(とうしょうだいじ)(奈良)

重要文化財
木造
素地
彫眼
166.2㎝
奈良~平安時代

顔の肉付けのボリュームを押さえている
体型も細身で、腰の位置を下げて胴長になっている

・十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)(円空仏)

大平観音堂(おおひらかんのんどう)(滋賀県)

木造
江戸時代
像高 180.5㎝

円空が晩年(58歳)、桜の一本の木から彫り出した

ガラスケースの右側が開き、土台がくるっと回転するようになっていて背面も見せていただける

大きくお腹を膨らませた像容から「安産の観音さん」と親しまれた

十一面観音菩薩立像(じゅういちめん かんのん ぼさつ りゅうぞう)

宝積寺(ほうしゃくじ)(京都府)

重要文化財
鎌倉時代

小顔で腰をわずかに左に曲げ、すらりと立っている
天衣など古い様式が見られる

十一面観音菩薩立像(じゅういちめん かんのん ぼさつ りゅうぞう)

観音寺(かんのんじ)(京都府)

国宝
奈良時代

一本造の心木の上に木心乾漆造という技法を用いている

頭上の化仏が小さめなのが特徴
左から2番目の黒ずんだ顔の化仏は、当初のものと考えられている

気品あふれる姿や慈悲に満ちた表情、天平文化の特徴を表している

十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)

園城寺(三井寺)(滋賀県)

重要文化財
平安時代
像高 81.8㎝

ヒノキの一木造で平安時代前期の制作
胴体部が短く、顔や衣文は深く鋭く彫り込まれている

坐っている十一面観音は、観音が住むという「補陀落山(ほだらくせん)」で生まれ変わった死者を迎え入れる

十一面観音坐像(じゅういちめんかんのんざぞう)

櫟野寺(らくやじ)(滋賀県)

重要文化財
平安時代
像高 312㎝

高さ3メートル余り、頭と体はイチイの一木から彫り出されています
台座・光背も含めると5メートルを超え、どっしりして頼もしく迫力があります

特別公開期間のみ拝観できます

ご利益は、10種の勝利と4種の果報(功徳)がある

10種の勝利

・病気にかからない
・溺死しない
・焼死しない
・不慮の事故で死なない
・一切の怨敵から害を受けない
・一切の凶器による害を受けない
・毒薬や虫の毒に当たらず
・悪寒や発熱等の病状がひどく出ない
・国王や王子が王宮で慰労してくれる
・金銀財宝や食物などに不自由しない
・一切の如来に受け入れられる

4種の果報(功徳)

・臨終の際に如来とまみえる
・地獄・餓鬼道・畜生道に転生しない
・早死にしない
・極楽浄土に生まれ変わる