勢至菩薩さまって?

勢至菩薩(せいしぼさつ)

ものごとを正しく見きわめる偉大な智恵を持ち、人びとを迷いや苦しみから救い、極楽浄土にみちびく仏さまです

梵字:サク

真言:おん さんざんさく そわか

インド名は「マハスタマプラプタ」

偉大な威力を持つ者」を意味し、足をひと踏みするだけで大地がゆれることから「得大勢菩薩(とくだいせいぼさつ)」「大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)」といわれます

慈悲の観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍(きょうじ)です

観音菩薩の基本形である聖観音(しょうかんのん)に似ていますが、見わけるポイントは宝冠(ほうかん)に水瓶(すいびょう)がついていることです

午(うま)年の守り本尊であり、ご利益は「智恵明瞭(ちえめいりょう)」「家内安全(かないあんぜん)」「除災招福(じょさいしょうふく)」です

勢至菩薩は月の化身(けしん)(姿を変えあらわれたもの)とされ、二十三夜(にじゅうさんや)(半月)に、月をおがんで悪霊を追いはらう行事があります


宝冠(ほうかん)
水瓶が彫られている

水瓶(すいびょう)
勢至菩薩のシンボル

条帛(じょうはく)
布をたすき状に結んでいる

瓔珞(ようらく)
胸かざり

臂釧(ひせん)
腕かざり

合掌印(がっしょういん)
両手を合わせる

腕釧(わんせん)
腕輪

天衣(てんね)
ショールのようにかけた布

(くん)
スカートのように布を腰に巻きつけたもの

宝冠の水瓶(すいびょう)が特徴的な菩薩

宝冠に人びとの願いを叶える「功徳水」が入った水瓶があらわしている
観音菩薩と見分けるポイントになっている

勢至菩薩立像(せいしぼさつりゅうぞう)

 

奈良国立博物館

鎌倉時代
像高 23.3㎝

銅造で鍍金(ときん)された像
水瓶が彫られた宝冠をかぶる

梵篋印(ぼんきょういん)(両手を上下に合わせる印相-手の中には真珠の薬箱があるという)を結んでいることから、「善光寺式阿弥陀三尊」の勢至菩薩像である

勢至菩薩立像(せいしぼさつりゅうぞう)

砺波市(となみし)(富山県)

室町時代以前
像高 28㎝

装飾的な宝冠は後世に制作されたものです

天部立像(てんぶ りゅぞう)(伝勢至菩薩(でん せいしぼさつ))

吉祥院(きちじょういん)(山形県)

平安時代

亀の上に立っており水天像と思われる

阿弥陀三尊(あみださんぞん)

阿弥陀如来(あみだにょらい)を中心に観音菩薩(かんのんぼさつ)と勢至菩薩(せいしぼさつ)をまつる

観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍とされる
観音菩薩が宝冠に化仏(けぶつ)をつけるのに対して、勢至菩薩は水瓶(すいびょう)をつける
観音菩薩が慈悲によって人びとを救うのに対して、勢至菩薩は智恵によって救う
観音菩薩は独尊像も多いが、勢至菩薩の独尊像はほとんどない

阿弥陀如来が死者の魂を極楽浄土に迎えにくるとき、観音菩薩と勢至菩薩とは、阿弥陀如来を先導するという
このとき観音菩薩は魂の入れ物である蓮台をもち、勢至菩薩は合掌する

勢至菩薩立像(せいしぼさつりゅうぞう)

(阿弥陀三尊像のうちの一体)

光臺院(こうだいいん)高野山(和歌山県)

重要文化財
鎌倉時代(1221年頃)

阿弥陀三尊像(あみださんぞんぞう)


快慶(かいけい)晩年の作品

三尊の光背(こうはい)は、銅製鍍金銀(ときんぎん)で、放射状の頭光(ずこう)や火焔(かえん)状唐草の飾りには、青緑色ガラスなどが取り付けられている

像本体も金泥塗り・截金(きりかね)と輝いている

宿坊の宿泊者に限り、朝勤行(6:30~)の後に拝観できます

勢至菩薩(せいしぼさつ)

(阿弥陀三尊像のうちの一体)

三千院(さんぜんいん)(京都)

国宝
勢至菩薩132.7㎝

久安(きゅうあん)4年(1148)の年号と、願主と思われる僧・実照(じっしょう)

阿弥陀三尊坐像(あみださんぞん ざぞう)

国宝
平安時代後期
像高 阿弥陀如来194.5㎝
観音菩薩132.2㎝
勢至菩薩132.7㎝
3躯(く)とも木造で、ヒノキ材を使用
表面は漆箔(しっぱく)

三千院の阿弥陀堂、往生極楽院(おうじょうごくらくいん)に安置されている阿弥陀三尊像
来迎印を結んだ丈六(約2.33m)の阿弥陀如来像を中心に、
向かって右に観音菩薩
左に勢至菩薩が従っている

観音菩薩と勢至菩薩は、「大和(やまと)座り」と呼ばれる独特の座り方をしている

やや前のめりで、腰を少しだけ浮かせ、「極楽浄土から、お迎えに来ました」と演出しているようだ

舟底型の天井を設け、極楽浄土に舞う天女や菩薩の姿が極彩色で描かれている

勢至菩薩(せいしぼさつ)

(阿弥陀三尊像のうちの一体)

浄楽寺(じょうらくじ)(神奈川県)

重要文化財
鎌倉時代
木造
金泥塗り
漆箔
彫眼
像高 177.1㎝(勢至菩薩立像)

阿弥陀三尊像(あみださんぞんぞう)

像高141.8㎝(阿弥陀如来坐像)
178.8㎝(観音菩薩立像)

阿弥陀三尊像が揃っている、運慶の唯一の作品

向かって右が観音菩薩、左は勢至菩薩像で、どちらの髻(もとどり)は高く結い上げられ
阿弥陀如来と両菩薩の目は、直接木を彫ってつくった彫眼で、運慶はこの三尊以降、格調を持たせるために、如来像と菩薩像には玉眼は使わなくなった

源頼朝の挙兵に従った武将で、侍所(さむらいどころ)初代別当(長官)の和田義盛(わだよしもり)の発願であることがわかりました

阿弥陀如来が来迎印を結んでいることから、和田義盛夫婦が極楽往生を願って依頼したとも考えられる

義盛はこの付近に7つの阿弥陀堂を建てたと伝えられ、浄楽寺もその1つといわれます

勢至菩薩立像

(阿弥陀三尊像のうちの一体)


浄土寺(じょうどじ)(兵庫県)

国宝
像高 371.1㎝

来迎の様子を表した阿弥陀三尊像の脇侍(きょうじ)勢至菩薩

左手に勢至菩薩のシンボル、水瓶を持っている

阿弥陀三尊像の場合、通常向かって右に観音菩薩が配されるが、右に勢至菩薩が配されている

阿弥陀三尊像(あみだにょらいさんぞんぞう)


国宝
鎌倉時代
木造
漆箔
彫眼
像高 阿弥陀如来像 530.0㎝
観音・勢至菩薩像 ともに像高371.1㎝

5メートルを超える、阿弥陀如来像

快慶が中国・宗の仏画を立体化して制作したものです

本像を安置する浄土堂は東向きに建てられ
背後の蔀戸(しとみと)から西日が差し込むとき
雲に乗った阿弥陀如来が来迎する様が目の前に再現される

勢至菩薩(せいしぼさつ)

(阿弥陀三尊像のうちの一体)

長岳寺(ちょうがくじ)(奈良県)

重要文化財
平安時代

阿弥陀三尊像(あみだにょらいさんぞんぞう)


長岳寺の本尊である阿弥陀如来(中央)と、脇侍である観音菩薩(右)と勢至菩薩(左)
運慶らが用いた玉眼を使った、現在最古の作例として知られる

深い衣文の彫りや量感豊かな体躯など、慶派の鎌倉彫刻に通じる特徴がある

勢至菩薩(せいしぼさつ)

(阿弥陀三尊像のうちの一体)


清凉寺(せいりょうじ)(京都)

国宝
平安時代前期
勢至菩薩 約168㎝
ヒノキの一本造

密教仏の影響を強く受けた作品
宝冠(ほうかん)や瓔珞(ようらく)などの装飾品が豪華

阿弥陀三尊像(あみださんぞんぞう)


阿弥陀如来 約178㎝
観音菩薩 約166㎝
勢至菩薩 約168㎝

阿弥陀如来像は、大日如来に近く、印は金剛界大日如来の智拳印(ちけんいん)を模したものと見られる