八部衆って?
八部衆(はちぶしゅう)
仏教を守るインドの神々
八部衆は、古代インドの鬼神、戦闘神、音楽神、動物神などが仏教に帰依したもので
十大弟子と共に釈迦如来の従者となり、仏教を守る守護神となった
八部衆は、天、龍、夜叉(やしゃ)、乾闥婆(けんだつば)、阿修羅(あしゅら)、迦楼羅(かるら)、緊那羅(きんなら)、摩睺羅伽(まごらが)です
四天王に仕える八部鬼衆は、乾闥婆(けんだつば)・毘舎闍(びしゃじゃ)・鳩槃荼(くはんだ)・薜茘多(へいれいた)・那伽(なーが/龍)・富單那(ふたんな)・夜叉(やしゃ)・羅刹(らせつ)です
乾闥婆(けんだつば)と夜叉(やしゃ)など、八部衆と八部鬼衆にも属し、神なのか 鬼なのか
八部衆と二十八部衆には、神なのか 鬼なのかが多い
♦八部衆
天(てん)
梵天や帝釈天などの「天部」の神々
龍(りゅう)
龍・龍王などと呼ばれる神々
蛇を神格化したもので、水中に棲み、雲や雨をもたらす
人面人形で冠上に龍形を表す
夜叉(やしゃ)
古代インドの悪鬼神
仏教の守護神となった
乾闥婆(けんだつば)
香を食べ、神々が飲む蘇摩酒(そましゅ)の守り神
仏教では帝釈天につかえる音楽神
阿修羅(あしゅら)
古代インドの戦闘神
太陽神が起源とも言われる
通常、三面六臂に表す
迦楼羅(かるら)
鳥類の王
口から火を吐き龍を常食にする
緊那羅(きんなら)
音楽や歌舞の神で、半神半獣の姿
帝釈天に従い、美しい声で歌う
摩睺羅伽(まごらが)
蛇を神格化
身体は人間であるが首は蛇である
帝釈天に従う音楽神
阿修羅(あしゅら)阿修羅王
3つの顔は人間の心の成長をあらわしている
梵字:ア
真言:のうまく さんまんだ ぼだなん らたんらたと ばらん たん
生命(asu)を与える(ra)者
阿修羅は、ペルシャなどでは大地にめぐみを与える太陽神として信仰されていたが
非(a)天(sura)
インドでは熱さを招き大地を干上がらせる太陽神として、常に娘をうばったインドラ(帝釈天)と戦う悪の戦闘神になりますが
お釈迦さまの教えを聞いて心をあらため、仏教の守護神になった
仏教では、阿修羅王が落ちた争いの絶えない世界を「修羅道(しゅらどう)」という
人間が死後に生まれ変わる六道(ろくどう)の一つとされます
奈良の興福寺(こうふくじ)の阿修羅像は、3つの顔と6本の腕を持ち
肌は赤く表わされ
手に持っていた月輪(がちりん)、日輪(にちりん)、弓と矢は失われている
でも、今のままが魅力的です
❶右上手
月輪(がちりん)を持っていた
❷左上手
日輪(にちりん)を持っていた
❸髻(もとどり)
髪を高く結いあげている
❹左の顔
苦悩の表情
思春期の顔
❺右の顔
いかりの表情
反抗期の顔
❻正面の顔
お釈迦さまの教えを聞いて正しい道を知った
悟りの表情
❼右下手
矢を持っていた
❽左下手
弓をもっていた
❾瓔珞(ようらく)
金・銀・真珠や宝石をつないだ胸飾り
❿合掌印(がっしょういん)
⓫臂釧(ひせん)
腕飾り
⓬碗釧(わんせん)
ブレスレット
⓭条帛(じょうはく)
布をたすき状に結んでいる
⓮裙(くん)
スカートのように布を腰に巻きつけたもの
⓯板金剛(いたこんごう)
裏に板を張ったぞうり
⓰洲浜座(すはまざ)
海岸の砂浜を表す台座
興福寺(こうふくじ)の八部衆像
日本の八部衆像は、奈良・興福寺のもの(奈良時代、国宝)がよく知られている
本来は、天、龍、夜叉(やしゃ)、乾闥婆(けんだつば)、阿修羅(あしゅら)、迦楼羅(かるら)、緊那羅(きんなら)、摩睺羅伽(まごらが)であるが
興福寺の八部衆は、天、龍、夜叉(やしゃ)、摩睺羅伽に代わり、五部浄(ごぶじょう)、沙羯羅(しゃがら)、鳩槃荼(くばんだ)、畢婆迦羅(ひばから)となる
八部衆像は、光明皇后が亡き母 橘三千代(たちばなのみちよ)の冥福を祈り、天平6年(734年)建立した西金堂に安置された
興福寺の八部衆像は少年のようで、とても人気がある
光明皇后は母が亡くなる4年程前、待望の子どもが満1歳になる前に亡くしている
沙羯羅(さから)には、6歳頃になった息子の姿を・・・
五部浄、阿修羅には10代の成長した皇子の姿を・・・
子を亡くし、母を亡くした光明皇后の深い悲しみが、人の心を動かす素晴らしい八部衆像に(*´ω`)
作者は、像造は百済からの渡来人 将軍万福(しょうぐん まんぷく)、彩色は秦牛養(はたのうしかい)とされる
八部衆像は、麻布を漆(うるし)で貼り重ねた乾漆造(かんしつづくり)で、いずれも1体が15kg程度
度重なる火災での焼失をまぬがれたのは、この軽さのおかげ・・・?!
火花散る中、お坊さんが仏像をかつぎ、走りまわっている姿が浮かびます
●五部浄像(ごぶじょう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 上半身 50.0cm
八部衆の「天」に相当する神
自在天子、普華天子、遍音天子、光髪天子、意生天子という五尊の浄居天(じょうごてん)を合わせて一尊としたものを五部浄居天と呼ぶ
像は胸から下を失っています
本像の右手部分が東京国立博物館に所蔵されている
頭に陸で最大の動物である象の冠をかぶり、正面を凝視する少年の姿です
二十八部衆の一尊にも含まれる
●沙羯羅像(さからぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 154.5cm
八部衆の「龍」に相当します
水中の龍宮に住み、雨を呼ぶ魔力を持ち、
釈迦誕生の時には清浄水をそそいで祝ったといわれます。
頭頂から上半身にかけて蛇が巻き付き、左を向き、少年のような表情
二十八部衆には「娑伽羅龍王(さがらりゅうおう)」の名で登場する
●鳩槃荼像(くばんだぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 150.5cm
八部衆の「夜叉」に相当します。
梵天が造った水を守る神とも、
死者のたましいを吸う悪鬼で人を苦しめる神、
四天王南方の守護神である増長天の家来ともされます
二十八部衆の一尊にも含まれる
像は炎髪にして、目を吊り上げ、口を開け、歯をのぞかせています
●乾闥婆像(けんだつばぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 148.0cm
帝釈天宮で簫(しょう)を吹き、神を供養します
天界の神酒ソーマの番人
四天王東方の守護神である持国天の家来ともされます
像は、頭上に獅子の冠をかぶり、目を閉じています
●阿修羅像(あしゅらぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 153.4cm
像は三面六臂、上半身裸で条帛(じょうはく)と天衣をかけ
胸飾りと臂釧(ひせん)や腕釧(わんせん)をつけ
裳(も)をまとい、板金剛をはいています
●迦楼羅像(かるらぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 149.0cm
インド神話上の巨鳥で、ビシュヌ神が乗る鳥、金翅鳥(こんじちょう)、常に龍を食します
雨を降らしたり、大雨を止めたり、家内安全等の神です
像は頭が鳥で、身体は人間で、左を向き、肩にスカーフを巻いています
三十三間堂、清水寺本堂の二十八部衆中の迦楼羅像は翼を持ち、笛を吹く姿に造られている
●緊那羅像(きんならぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 152.4cm
毘沙門天の家来、または帝釈天宮の音楽神でもあります
「何か(kim)人(nara)」の意味で、半神とされます
頭上に一角、額の縦に3つ目の目があり、やや左を向きます
●畢婆迦羅像(ひばからぞう)
国宝
奈良時代
脱活乾漆造、彩色
像高 155.4cm
興福寺像は、やや老相に造られ、口やあごにひげをたくえている
正確なサンスクリット語名は不明
八部衆の「摩睺羅伽(まごらか)」に相当します
大蛇ニシキヘビを神格化したともいわれます
音楽をつかさどる神で、横笛を吹き、諸神を供養します
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