文殊さまって?
文殊菩薩(もんじゅぼさつ)
文殊菩薩は「三人寄れば文殊の知恵」のことわざでよく知られる智恵の仏さまです
梵字:マン
真言:おん あらはしゃ のう
眷属:善財童子(ぜんざいどうじ)
優塡王(うてんおう)
維摩居士(ゆいまこじ)(最勝老人(さいしょうろうじん))
須菩提(しゅぼだい)(仏陀波利三蔵(ぶっだはりさんぞう))
文殊さまは、古代インドに実在した智恵の仏さま
釈迦の死後、古代インドのコーサラ国の、バラモン階級の者として誕生したとされる
名前は「モンジュシュリ(マンジュシュリ)」という
漢字を当てはめ『文殊』とした
正式名称は『文殊師利菩薩』
すぐれた智恵を持ち、お釈迦さまの教えを経典(きょうてん)にまとめたといわれます
熱心な信者の維摩居士(ゆいまこじ)と仏の教えについて問答(もんどう)をしたことが「維摩経(ゆいまぎょう)」に書かれています
文殊菩薩像は、百獣(ひゃくじゅう)の王である獅子(しし)の上に置かれた蓮華台にすわり、経巻(きょうかん)をのせた蓮華と宝剣を持つ騎獅像(きしぞう)が多い
うさぎ年の守り本尊で、「智恵明瞭(ちえめいりょう)」「学業成就(がくぎょうじょうじゅ)」のご利益があるといわれています
卯年生まれの人は「厄除け」・「開運」のご利益も
❶宝髻(ほうけい)
髪を高く結いあげ、宝冠をつけている
五髻(ごけい)
髻の数が五つあるものを五髻といい、五智五仏を表す
髻の数は像によって変わるが、文殊菩薩は五髻が多い
❷蓮華(れんげ)
蓮華の上に経巻(きょうかん)がのっている
慈悲・慈愛を象徴するハスの花)
❸宝剣(ほうけん)
智恵を象徴し、煩悩を断ち切るとされる
降魔の利剣(ごうまのりけん)」という剣
❹蓮華座(れんげざ)
❺獅子(しし)
百獣の王である獅子は智恵の力強さのシンボル
その強さで文殊菩薩を守るともいわれる
●普賢菩薩(ふげんぼさつ)とともに釈迦如来の脇侍(わきじ)として釈迦三尊像としてまつられる
・文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)
願興寺(がんこうじ)(岐阜県)
重要文化財
鎌倉時代
手に持つ鋭い剣で仏の智恵を表わす
釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)
通常は向かって右に文殊菩薩像、向かって左に普賢菩薩像だが、
願興寺の三尊は、右に象に乗った普賢菩薩像、左に獅子に乗った文殊菩薩像が安置されている
●獅子に乗った文殊菩薩と、文殊さまの説法を聞く眷属(けんぞく-従者)「五台山文殊(ごだいさんもんじゅ)」
中国の唐代に、五台山(ごだいさん)が文殊菩薩の住む清涼山(せいりょうざん)であった
五台山で説法をする姿を表現した「五台山文殊」が造られるようになった
天台宗の僧、円仁(えんにん)によって中国から五台山文殊がもたらされた
・文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)ならびに四侍者像(しじしゃぞう)
西大寺(さいだいじ)(奈良県)
重要文化財
鎌倉時代
像高 82.5㎝
・仏陀波利三蔵像(ぶっだはりさんぞうぞう)
像高 104㎝
四眷属の中で最も博学とされる
右手に錫杖(しゃくじょう)をもち、左手に経巻(けいかん-お経)をのせる
・善財童子像(ぜんざいどうじぞう)
像高 86㎝
五代山へ向かう文殊菩薩を先導する
手をあわせ、うるんだ瞳で文殊菩薩を見つめる
・優填王像(うてんおうぞう)
像高 119㎝
初めて仏像を制作したといわれる古代インドの国王
獅子の網を引いている
・最勝老人像(さいしょうろうじんぞう)
像高 105㎝
大聖老人(だいしょうろうじん)とも呼ばれる
仏陀波利三蔵(ぶっだはりさんぞう)に対して『仏頂尊勝陀羅尼経(ぶっちょうそんしょうだらにきょう)』を中国に伝えるように説いた
●4人の従者を連れた「渡海文殊(とかいもんじゅ)」は、文殊さまが獅子に乗って仏教を中国から日本に伝える姿とされる
・渡海文殊群像(とかいもんじゅぐんぞう)
安倍文殊院(あべもんじゅいん)(奈良)
国宝
日本最大 約7m
快慶作
「渡海文殊群像」は、雲海を渡り、私たちを救い、智恵を授けるため説法の旅に出かけている姿です
・騎獅文殊菩薩像(きしもんじゅぼさつぞう)
快慶の作
高さが約7mあり日本最大です
・善財童子像(ぜんざいどうじぞう)
文殊菩薩の教えを受け、仏の悟りを得るために、53名の善知識を歴参することで知られています
渡海文殊群像では先導役となっており、お顔が正面を向いていますが、本来は文殊菩薩に呼び止められ文殊菩薩を振り返りながら見ています
・優填王像(うでんのうぞう)
文殊菩薩が乗る獅子の手綱(たづな)を持つ
優填王像は西域・優填国(うでんこく)の王であったと伝えられています
・維摩居士像(ゆいまこじぞう)
(最勝老人(さいしょうろうじん))
文殊菩薩に向かって左後ろに立つ老人像
維摩居士が病気であった際、お釈迦さまが文殊菩薩を見舞いに送ったという
・須菩提像(すぼだいぞう)
(仏陀波利三蔵(ぶっだはりさんぞうぞう))
文殊菩薩に向かって左手前に立つ僧は、仏陀波利三蔵(釈迦十大弟子の一人である須菩提)です
バラモンの僧であった仏陀波利三蔵は文殊菩薩に言われインドから中国へ『仏頂尊勝陀羅尼経』を中国語に訳して広めた
現在も文殊菩薩の聖地である五台山にいると伝えられています
・騎獅文殊菩薩像(きしもんじゅぼさつぞう)
慈恩寺(じおんじ)(山形県)
重要文化財
平安時代
像高 37.2㎝
聖武天皇の勅令によって開山した寺
獅子が文殊さまを乗せて、まわりの様子を伺いながら歩いているようなゾクッとする像です
●文殊の智恵は純粋であることから子どもの姿をした稚児(ちご)文殊などもあります
稚児文殊画
●日本で文殊菩薩が単独でまつられたのは、平安時代に最澄が、清純な童子姿「稚児文殊像」を中国から伝えたのが最初だとされる
・文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)
東大寺(とうだいじ)(奈良県)
南北朝時代
像高 90.0㎝
本体はヒノキの寄木造
獅子や台座に彩色が残る
・文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)
禅定寺(ぜんじょうじ)(京都)
重要文化財
平安時代前期(藤原時代)
ヒノキの一本造
像高 57cm
獅子の上にのせた蓮華の台座から右足だけをたらし、左足は台座の上にのせている
半跏騎像(はんかきぞう)と呼ばれ、文殊菩薩像としては珍しい
●禅宗のお寺では、修行僧の手本としてお坊さんの姿をした聖僧文殊(しょうそうもんじゅ)がまつられます
・僧形文殊菩薩坐像(そうぎょう もんじゅぼさつ ざぞう)
法金剛院(ほうこんごういん)(京都)
重要文化財
平安時代後期
一木造り
数少ない、比丘形(びくぎょう-僧侶)の姿で表わされた、文殊菩薩です
・僧形文殊菩薩坐像 忍辱山 円成寺(奈良)
忍辱山円成寺(奈良)
奈良県指定文化財
鎌倉時代
像高82.7
堯慶作
胎内には食堂旧本尊で、像高46.0、檜の一木造の僧形合掌像が収められています
開山の命禅上人の像ではないかと言われる
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