明王って?
明王(みょうおう)
明王は、恐ろしい顔で悪と戦い、人びとを救う仏さま
明(みょう)とは真実の世界
「明呪(みょうじゅ)」「真言(しんごん)」を意味する
明王は如来の化身(けしん)で、強制的に人びとを仏教にみちびく
明王像は、密教伝来以後に造像されるようになった
●明王像?
恐ろしい忿怒(ふんぬ)の顔で、
美しい装飾を身にまとい、
武器を手に、
火に包まれ、
固い岩座や、瑟瑟座(しつしつざ)などの台座に乗っている
❶火焔光背(かえんこうはい)
燃え上がる炎の形をした光背
煩悩を焼く尽くし、揺るぎない智恵のシンボル
❷忿怒面(ふんぬめん)
明王のほとんどが怒りに満ちた表情
❸宝剣(ほうけん)
悪や災いを打ち砕く武器
❹弁髪(べんぱつ)
長い頭髪を編んで肩へ垂らす髪型
❺条帛(じょうはく)
左肩から右脇の下にまとうショール
❻瓔珞(ようらく)
金・銀・真珠などをつないだネックレス
❼羂索(けんさく)
人びとを救う投げ縄
❽臂釧(ひせん)
腕かざり
❾腕釧(わんせん)
ブレスレット
❿裙(くん)
スカートのように腰に巻きつける布
裳(も)ともいう
⓫瑟瑟座(しつしつざ)
組み上げた磐石(びくともしない石)を表している
明王にだけに見られる
●明王の種類
基本は五大明王
明王の種類には、五大明王(不動明王(ふどうみょうおう)・降三世明王(ごうざんぜみょうおう)・大威徳明王(だいいとくみょうおう)・金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)・軍荼利明王(ぐんだりみょうおう))
五大明王に、無能勝(むのうしょう)・大輪(だいりん)・歩擲(ぶちゃく)などの三大明王を加えた八大明王がある
愛染明王(あいぜんみょうおう)、孔雀明王(くじゃくみょうおう)・烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)、大元帥明王(だいげんすいみょうおう)、馬頭明王(ばとうみょうおう-馬頭観音)の像も多くある
●五大明王
・不動明王(ふどうみょうおう)
佛法紹隆寺(ぶっぽうしょうりゅうじ)(長野)不動明王
明王の中心的存在
大日如来の化身とされ、煩悩を抱えた人々を力ずくで救うために、忿怒の表情をしている
・降三世明王(ごうざんぜみょうおう)
金剛寺(こんごうじ)(大阪)降三世明王
4つの顔と8本の手を持つ
手には金剛鈴(こんごうれい)、弓矢などを持っている
仏教に従わなかったヒンドゥー教のシヴァ神とその妻を踏みつけている像もある
・大威徳明王(だいいとくみょうおう)
称名寺光明院(しょうみょうじ こうみょういん)(神奈川)大威徳明王
6つの顔と6本の手、6本の足を持つ明王
インド神話に、水牛の姿をして、凶悪な女神と戦ったエピソードがあることから、水牛にのっている
・金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)
醍醐寺(だいごじ)(京都)金剛夜叉明王
3つの顔と6本の手があり、正面の顔には眼が5つある
金剛杵(こんごうしょ)の法力によって悪を打ち砕く
金剛とはダイヤモンドのことで、何ごとにも破壊されない仏の智慧を表す
・軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)
金勝寺(こんしょうじ)(滋賀)軍荼利明王立像
8本の腕を持ち、武器を持っている
首や手首に蛇を巻きつけた像が多く、煩悩を打ち砕く
密教では、疫病をもたらすインドの神様を制する
●そのほかの明王
・愛染明王(あいぜんみょうおう)
三井寺(みいでら)(園城寺(おんじょうじ))(滋賀県)愛染明王
愛欲を悟りへと浄化させるのが愛染明王である
3つの眼、6本の腕を持ち、体の色は愛欲の強さを表す赤色
頭上に獅子の顔のついた獅子冠(ししかん)をかぶる
・孔雀明王(くじゃくみょうおう)
正暦寺(しょうりゃくじ)(奈良)孔雀明王
悪を食いつくし(毒を消し)、恵みの雨(安楽)をもたらす仏さま
・烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)
瑞龍寺(ずいりゅうじ)(富山県)烏枢沙摩明王
炎に包まれて全身が赤く、髪は逆立ち、いかりの顔で片足をあげて立つ
いっさいのよごれを焼きつくすトイレの仏さま
・大元帥明王(だいげんすいみょうおう)
秋篠寺(奈良)大元師明王像
四天王や二十八部衆などを従えて、敵から国家を守る
●五大明王の配置
五大明王は、平安時代の宮中で正月に行われた後七日御修法(ごしちにちのみしゅほう)という儀式の本尊でした
不動明王を中心に、東に降三世明王(ごうざんぜみょうおう)、南に軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、西に大威徳明王(だいいとくみょうおう)、北に金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)(真言宗)・烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)(天台宗)を配する
それぞれ、五智如来(ごちにょらい)(五仏)の大日如来、阿閦如来(あしゅくにょらい)、宝生如来(ほうしょうにょらい)、阿弥陀如来(あみだにょらい)、不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)が、仏教を信じさせるために姿を変えたもの(化身)である
・五大明王像(ごだいみょうおうぞう)
東寺(とうじ)(京都)
国宝
木造
像高 約170㎝
平安時代 承和6年(839)
空海の密教立体世界
・五大明王像(ごだいみょうおうぞう)
大覚寺(だいかくじ)(京都)
大覚寺には、現存している三組の五大明王像の二体
・五大明王像(ごだいみょうおうぞう)
醍醐寺(だいごじ)(京都)
重要文化財
平安時代
木造
彩色
細身の体、飛び出しそうな目をむいている表情がユニーク
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